TALK SESSION 2016.7.28 (Thu)

 HIROSHI WATANABE aka KAITO / lycoriscoris

 

司会: 原 雅明

 

日程: 2016年7月28日(木) OPEN19:00 / START19:30  *終了21:30予定

 

会場: KONTACTO EAST STUDIO

 

料金: 1,500円

 

チケット申し込み >> PassMarket

 

定員: 20名  *申込先着順で定員に達し次第、締め切らせていただきます。

 

コンテンツ自体のクオリティはもちろん、人脈やアイディア、知識と経験、タイミングや発信方法、バランス感覚。創り出した音楽を広く世界に拡めていくために必要な要素はいろいろとある。

海外のレーベルから作品をリリースするということもひとつの有効な手段だ。

ドイツの人気テクノ・レーベル<コンパクト>唯一の日本人アーティストとしても知られ、先日はデリック・メイ主宰のレーベル<トランスマット>からアルバム『MULTIVERSE』をリリースするという快挙を成し遂げたばかりのHIROSHI WATANABE aka KAITOと、国内レーベルからこれまでアルバムを2枚リリース、先日<コンパクト>のKXシリーズから新作EP「Transient EP」を発表したばかりのlycoriscoris。世界に作品を発信したばかりの2人に話を聞くのは、音楽評論家の原雅明。

 

昨年故レイ・ハラカミのオリジナルアルバムと企画盤、計8タイトルを自身のレーベル<rings>から再発、先日原氏のテキストが「A Guide to Rei Harakami」としてRed Bull Music Academyのサイトで英訳掲載された際には、日本の音楽批評が日本の外へ向かうことの重要性に触れた。

 

海外を意識し、開かれた視点を持つことは海外へアプローチする際には重要だが、その逆のスタンスで創り出す音楽は日本ならではのコンテンツとして時に強度を持つかもしれない。サウンド、批評するテキスト、アートワーク、ライフワークなど、様々な角度から国産エレクトロニック・ミュージックの今にリアルに迫り、音楽周辺のカルチャーを含めて、世界へ発信出来るコンテンツの在り方や可能性について考察する。

HIROSHI WATANABE aka KAITO (Transmat / Kompakt)

 

ドイツ最大のエレクトロニック・レーベルKompakt唯一の日本人アーティストとしてKaito名義の作品を発表する傍ら、ギリシャのKlik Recordsからも作品をリリースしている。2002年に制作したKaitoの1stアルバム『Special Life』に収録された「Intension」がFrancois K.のミックスCDに収録されるなど瞬く間に大反響を呼び、10年以上が経過した現在も色褪せることのない名曲として語り継がれている。その後、Kompaktのコンピレーション・アルバムにも収録された表題曲を含む2ndアルバム『Hundred Million Light Years』を発表。この2枚のアルバムで一躍Kaitoの名は世界中に浸透し、バルセロナのSonar Festivalなどのビック・イベントでライヴを披露した。Kaito名義のオリジナル・アルバムでは常に対になるビートレス・アルバムも制作され、繊細かつ美しい旋律により幅広い音楽ファンに受け入れられている。3rdアルバム『Trust』に対しての『Trust Less』では更にアコースティックな要素も取り入れ、リスニング機能をより高めた作品となった。本名のHiroshi Watanabe名義では自身最大のセールスを記録した1stアルバム『Genesis』に続き、2011年に『Sync Positive』を発表。タイトルが示す通り、リスナーを鼓舞させる渾身の作品となっている。またリミックスを機に交流を深めてきた曽我部恵一との異色コラボレーション・アルバム『Life, Love』ではメランコリックな音像と歌声が溶け合った叙情的なサウンドで新境地を切り拓いている。一方、ニューヨーク在住時代に出会ったグラフィック・デザイナー、北原剛彦とのダウンテンポ・プロジェクトTreadでは、シンプルで柔らかい上音と乾いたビートの融合を絶妙のバランスで確立し、ハウス、テクノ、ヒップ・ホップなどジャンルの壁を越えて多方面から注目を浴びることに。限定生産された5枚のアルバムと4枚のEPは不変の価値を持つ名盤として知られている。2013年にはKompakt設立20周年を記念して制作された2枚組DJミックス『Recontact』を、更にKaito名義としては4年振りとなるアルバム『Until the End of Time』を発表。新生Kaitoとも言える壮大なサウンドスケープが描かれている。2016年初頭にはテクノ史に偉大な軌跡を刻んできたデトロイトのレーベルTransmatよりEP『MULTIVERSE』のリリースが決定している。主宰Derrick Mayの審美眼により極端に純度の高い楽曲のみがナンバリングされるため、近年はリリースそのものが限定的になっている中での出来事。さながら宇宙に燦然と煌めく銀河のようなサウンドが躍動する作品となっており、4月にはEPと同名のアルバムを発表することがアナウンスされている。歴史を創出してきた数多のレーベルを拠点に世界中へ作品を届け続けるHiroshi Watanabe。日本人として前人未到の地へ歩みを進める稀代の音楽家と言えるだろう。

lycoriscoris

 

東京を中心に活動する音楽家。幼少の頃より楽器に触れて育ち、 バンド活動を経て2009年頃より本格的に電子音楽の制作を始める。 これまでに1枚のEPと2枚のフルアルバムをリリース。「DOMMUNE」や、涼音堂主催「渋響」、「OUT OF DOTS 2012-2013」、「ProjectedScape」、「sonorium」、「2.5D」、「EMAF 2013」などに出演し、2012年8月には上海などの5カ所を巡る中国ツアーを行なう。 Andreas TillianderやMARK FELL、らの来日公演で共演。またリミキサーとしてpawnやkous、アントニオカルロスジョビントリビュートコンピなどに参加。音楽誌、サウンド&レコーディングマガジンへのインタビュー掲載、また同誌への音響プログラミングソフトMax/MSP記事に寄稿するなど活動は多岐にわたる。生演奏やプログラミング、サンプリング、カセット・テープなどを駆使しながらも、一貫してデジタル時代を逆行するかのようなオーガニックな音像を追求している。

 

原 雅明

 

音楽評論家。レーベルringsのプロデューサー、LAの非営利ネットラジオ局の日本ブランチ dublab.jpの運営も務める。

近編著『ザ・ドリーム・シーン 夢想が生んだ架空のコンサート・フライヤー&ポスター集』(DU BOOKS刊)